今年もあっという間に残りわずか・・・
恒例の扁桃腺炎にもかかり、年内納期の期限も迫り12月はバタバタでした・・・
振り返ってみると今年はいろんな事にチャレンジした年だったように思います。
毎年チャレンジはしてるんですが、今年は例年に比べ多すぎたと思う。
来年は少し余裕を持って例年通り新しい事へチャレンジしていきたいと思っています。

クリステもやっと新規受付再開の目途が立ちました。
スタッフのみんなありがとう( -д-)ノ

さて恒例のトラブルランキング
クリーニングステーションで今年一番多かったトラブルを毎年12月に集計していまして、それを見ながら正月休みに色々考えるという事を毎年やっております。昨年は「ガーデンパーティ」や「ヴェルニ」が印象的でした。

統計を取ってみると今年はなんと「他の業者がらみのトラブル」が一番多かった事になりました。
先日も日経新聞さんの取材の際、「今どういうのをやっているんですか?」と聞かれ、事務所に開封されて置いてあるカウンセリング中の依頼品を1点1点説明していきました。
「これがある業者さんでベタベタ塗られたバッグです」などと話していくと、その半数が「クリーニング業者さんでのトラブル」でして・・・
正直僕も説明しててびっくりしました(; ̄Д ̄)

今年になってなぜこういうトラブルが増えたんだろって自分なりに考えたんですが、昨年「染み抜き」が世間で注目を集めたんで「染み抜き」などの特殊技術を営業戦略として使いだした業者さんが増えたという部分が一番大きいと思います。

確かに今までは「クリーニング店に出したけど断られた」という内容の話だったのが、今年は「クリーニング店に出したら変になって帰ってきた」という内容の方が断然多かった。

クリーニングだけでは売り上げが伸び悩む中、付加価値という部分での戦略というのは間違っていないのですが、あまり背伸びしすぎて逆効果を生んでるケースもあると思います。
「洗う」というクリーニングから「汚れを確実に落とす」という部分にみなさんが興味を持って頂いているというのは良いことだとは思いますが・・・

ただ、質の悪いのもたくさんあります。
依頼者の泣き寝入りのようなケースも多く、なんでこれが通るのよ?って同じ業者として腹立たしくなる事もあります。

脱色1

















ベージュの綿のパンツの脱色です。
これ、依頼者の話では元々はシミがついたと思い、染み抜き専門店に依頼したが落とせないと言うことで戻ってきたら、以前より酷くなってたという事例。

元々シミだったのか、それとも脱色だったのか分かりませんが、脱色の中央にシミのようなものが残っていました。
お客さん「これじゃ履けないじゃない」と言った所、お店側は「最初からなっていた」の一点張り。



脱色2















実は裾にもあり、元々脱色だったような感じもしますが・・・
業者さん側で抜染作用のある液をこぼしたとは思いたくない(笑)

最初電話で相談されたとき、「綿生地のシミや脱色であれば、他の業者さんでも治せる所がありますので紹介します」と染色補正業者さんを紹介したのですが、「この色だと50%から60%ぐらいが限界かもしれない」とかなり微妙な対応をされたらしく、結局僕の所でやることになった(笑)

脱色3
















脱色4
















綿素材の脱色であればほとんどなんとかなります。
結局お店側は非を認めなかったようで、費用は依頼主の方にお支払いしていただくことになりました。
当社は基本的に業者さんと依頼主さんの間に入る事はやめていますが、こういう依頼が来るたびに、染み抜き専門店と謳っているのなら自社でこれくらいなんとかしたらいいのにって思います。


もひとつ、先月面白い体験をしました。
僕にものすごい近い存在の業者さん2社を経由して来たケースなんですが・・・
「近い」というのはその会社も作業をする職人も僕がよく知っているという意味です。
依頼主の方がその2つの業者さんとのやり取りを手紙に書いて送ってくれたので紹介します。

綿コートのフィブリル化とタンクトップの脱色です。

フィブリル化1
















依頼主の内容をまとめた僕の推測は、黒の綿コートの裾の部分が何かで挟まって、白く傷が入ったのを依頼主がシミだと思い自分で洗剤を付けて擦ってしまったという内容でした。
まずAとうい染み抜き専門店に出したら「大丈夫ですよ」と言われ帰ってきた状態がこの上の写真です。
気持色が濃くなったかなという程度だったのに8000円も取られたと、依頼主はかなり激怒していました。

その後Bという染み抜き専門店に出したら、「ほとんど分からなくできます」という内容だったようです。
しかしもう1点、タンクトップの脱色の依頼もあり、そちらが微妙な診断だったのでそのまま触らないで僕のところに来ました。

フィブリル化2

















フィブリル化を簡単に説明すれば、繊維表面が摩擦で切れて毛羽立った状態。
着用して上から見れば、写真のようにより白く見えるのが特徴です。
毛羽が光に反射するので、このように白く見えます。

フィブリル化はほとんど治せますが、中央に挟まったような傷があり、それはかなり繊維を傷付けていて、繊維内部まで傷が入っています。
ですので、中央の傷の周りの白っぽさはなくなりますが、挟まったような傷は治せませんというのが僕の回答となりました。

タンク1
















綿ジョーゼットの脱色です。原因は分かりませんが脇にも薄く円形状の脱色があったので汗の可能性もあります。
こちらも最初Aという染み抜き専門店に送ったところ、「これは色が入らないので染色できません」という回答だったようです。
次にコートと一緒にBという染み抜き専門店に依頼したところ、「診断に2カ月ぐらい待たされて4割から5割ぐらいは・・・」という曖昧な返事だったので、僕のところに来ました。

こっちは単純な部分脱色なので、部分染色で100%に近いぐらい治せるというのが僕の回答です。
ベージュグレーの色味で青味が抜けるとオレンジ色になる典型的な事例です。


正直この依頼主からの手紙の内容にはショックでした。
自分の身近な所を経由して来たという部分ではなく、普段染み抜きを専門に仕事をしている人間でも、こんなにも判断が違うという事に驚きました。

Aの職人さんは染匠技術部会に勉強に来た事がある。
僕は彼に染み抜き作業を見せたけど、彼は僕に自分の染み抜き作業を見せなかった。見せてと頼んだが断られた(笑)
しかし僕は自社サイトの事例集の画像を見る限りそれ相応の技術を持っているんだと思っていた。
しかも、自社サイトには「落ちなかった場合は料金は頂きません」と明記しているにも関わらず、綿のコートはまだはっきり白く残っているのに8000円も頂いている。
タンクトップに関しては染色できないというレベル・・・

彼に言える事は、「上っ面だけパクっても結局は自分に返ってくるよ」ということだけです。


Bの職人さんはまだ精神的には壊れていないようでした。
ただ、綿素材なんでできれば9割ぐらいは補色できるようになっててほしかった。

染み抜きには染色が必要不可欠です。
これは染み抜きをしていけば分かることです。

今回自分の身近な存在の職人さんと言うことで、あえてブログに挙げてみました。
彼らが見てどう思うか分かりませんが、どう感じようとも行動に起こしてほしいと思って、僕が思った事をそのまま文字にしました。革や毛皮の染色の事ではなく、繊維の染色なんだから、それは染み抜きをする以上必要不可欠なんです。


フィブリル化3

















タンク2


















「染み抜き」を広めたいという想いが、結果的に「染み抜き」によるトラブルを増やしているとしたら、僕は何のために頑張ってきたんだろう・・・