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昨年あげたマッキントッシュの襟ぐりの劣化とは少し違う事例になります。
原因は分からないということですが、このように部分的にゴム樹脂の劣化が進み軟化した樹脂が染み出してきている状態です。

別の染み抜き専門店に出したところ上からアクリルでつぶされたような処理になっていました。
マッキントッシュのゴム樹脂の染み出しをアクリルや顔料などで上から塗りつぶすような作業をしている業者さんがいるようですが、そういう安易な処理方法は危険です。
材質的にゴムの軟化を促進させる要因になる可能性があります。

このような樹脂の劣化による染み出しのシミに関しては、滲み出たゴム樹脂を染み抜きで取り除いてあげる作業が必要不可欠なのです。

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染み抜きでゴム樹脂を取り除いた画像になります。
染み抜きをすれば生地側の色も少し薄くなりますので、最後に染料で染色します。

染み抜きをした後であれば、状態によっては顔料やアクリルを部分的に使用することもありだと思いますが、軟化剤と併用する事やシリコンオイルなどと一緒に混ぜて使うことが必要です。

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今回のケースでは染料だけで修復しました。
染み抜きをした部分は周りの生地と比べるとゴム樹脂が染み込んでいない分少し違和感はありますが、今後同じように染み出して来るということはなくなります。

当社では他店でのトラブル品が多く届きますが、やはりトラブルの多くは依頼品の状態をきちんとお店側と依頼主側が把握するという部分ができていない事がほとんどです。

依頼者の「今の状態を元に回復させたい」という強い気持ちは理解できますが、まずは依頼品の素材の特性や構造を理解して頂く方が大事だと僕は思います。

しかし、依頼者側にストレスを与えないように、その依頼品の構造についての説明をするのは意外と難しい。
誰もが「そんな事どうでもいいから、治るの?治らないの?」って言いたいと思いますから
でも、依頼主だからこそ、その依頼品の特性や構造は知っていてほしいし、大事なものであるなら知っていて使ってほしい。
その上で今回のトラブルについての修復内容の話(できる事とできない事)をするようにしていけば、修理内容に対するトラブルはかなり激減されると思います。

構造についての説明をしていくと
「そういう製品だって知ってたら買わなかったのにな、もう今後はこのメーカーのは買わない」とか言われる人もいます。

でも、どのメーカーでもどのブランドでもトラブルが起きやすい製品はあります。
特に機能性よりデザイン性が重要視される世の中です。

人だって物だって長所と短所があるんだってことでなんですよ。
便利なもの、楽なものを選ぶのではなく、1つ1つの長所と短所を理解して付き合って行くことが大事な事なんじゃないでしょうか?