最近エナメルの問い合わせが多く、エナメルとはどういう構造でどういう特性があるかをご存じなく使用されている方が大変多いので、エナメルの染み抜きについてまとめてみます。

エナメルは革の上に透明は樹脂をラミネートして作られています。
メーカーによって原料としている素材の性質は様々で、ポリウレタン系か塩化ビニル系の素材を独自に改良して使う事が多いです。
表面は透明なフィルムで色は着色されていません。色がついているのは下の革の層なのです。
分かりやすく例えるならテレビやスマフォの液晶画面みたいなもので、色はその下の層で発色していると考えてください。

基本的にエナメル面は完全防水で汚れません。劣化で表面がペタついて来ることがありますので、汚れが付着したりしますが、内部に染み込む事はありませんので、アルコールで拭いてあげれば汚れは落ちます。
このような布や革にはないメリットがあるのですが、色素を転写して吸引してしまうという他にない特性があります。


色素分離除去処理
当社ではエナメル質を一時的に変化させて染み込んだ色素を抜き取るという技術を2010年に開発し提供しております。(今現在この方法で色素を抜き取れるお店は世界で当社だけです)

この方法ではエナメル質の光沢風合い質感を全く変化させることなく、内部に沈着した色素だけを抜き取れます。


エナメル染み抜き1
















エナメル染み抜き2
















エナメル質を一時的に変化させ、特殊なレーザーを当てて処理していきます。

エナメル染み抜き3
















エナメル染み抜き6
















エナメル層の中に浸透している色素は全て抜き取れますが、その下の革の層までしっかり沈着している色は取れません。
革の層まで沈着しているかどうかは実際に処理してみないとわかりませんが、今までの研究データからある程度予測はつくようになりました。

転写時間
転写色移りの原因となった物との接触していた時間です。
例えばバッグの中でレシートと触れて転写が起きた場合の接触時間は24時間以内と考えられますが、保管中に隣にあったバッグや靴などとくっついていた場合は接触時間がかなり長いと考えられます。
接触時間が長ければ長いほど転写、沈殿率は高くなります。

経過時間
転写が起きてから色素分離除去処理を行うまでの時間です。
色素分離除去処理に限らず、色移りというのは基本的に時間をかけずに処理を行うというのは鉄則です。
特にエナメルの場合、時間の経過と共に色素が内部に沈殿していくということを忘れてはいけません。
転写に気づいて1週間後に処理を行うのと1年後に処理を行うのでは転写沈殿率は全く異なります。

次の事例の写真は転写が起きてから1年後の状態を色素分離除去処理した物です。
エナメル層には8割程度沈殿しており全て抜き取った状態ですが、下の革の層に2割程度沈殿していた為、濃い転写の部分は薄ら色素が見える状態となります。
(使用には支障のないレベルにはなったと思います)
エナメル染み抜き4

















エナメル染み抜き5

















最近問い合わせが多い内容をQ&Aでまとめてみました。

Q メーカーでエナメル製品の色移りは落ちないと言われてたのですが落とせますか?
A
 落とすのではなくエナメル層に沈殿している色素を抜き取る事は可能です。

Q 他のサイトで「表面に付着したシミは落とせますが染み込んだシミは落とせません」と書いていました。
A 表面に付着したシミはわざわざお店に出さなくても自分で落とすことは可能です。
  エタノール(アルコール類)もしくは無色の除光液などを脱脂綿に付けて軽く拭き取ってあげれば落ちます。
  
最近この手の取りあえずクリーニングしてみます的な悪質なサイトが多いようですので注意してください)
  この作業で落ちなければエナメル表面にシミはなく、転写色移りの状態だと思ってください。
  除光液は色がついている物は絶対に使わないでください。除光液の色は転写色移りします。

Q 他店で染色をして色を塗るしかないと言われた
A それは染色ではなく表面塗装です。
  車の塗装と同じ原理でエナメル層の上にエナメル樹脂を塗る業者さんがいますが、それはエナメルではなく全く別の素材になり、そのまま使用していくと1〜2か月以内に必ず塗面がひび割れしてきます。
なぜならエナメルとは前途説明したとおり、元々エナメル樹脂を塗って作られているわけではなく、フィルムを革にラミネート(熱圧縮)して作られている製品だからです。
エナメル製品をいくら曲げても表面が割れる事はないのですが、このエナメル樹脂加工を表面にすると曲げたら割れます。

「エナメルを剥がして表面に再加工します」と堂々と言っている悪質業者さんがいるようですが、本来エナメルとは加工剤として存在している物ではなく、フィルムを貼り付けてあるので製品になってから再加工などはできません。
それらの業者さんは必ずクレーム対応期間が返送して1週間から2週間になっているはずです。

Q エナメルが古く色素分離除去処理ができない場合は染色できると聞いたのですが
A 当社ではレーザーでエナメル層の下に色素を染み込ませ染色する技術を2013年に開発しました。
  色はどんな色でも染色することができますが、転写色移りしている場合は転写している色素が目立たなくなる色にしなければ意味がありませんので、染色できる色味が限られてくることがあります。
白いエナメルを白に染め直すという業者さんがいたらそれは染色ではなく塗装ですのでご注意ください。

Q 急いでいるのですが色素分離除去はどれくらいで仕上がりますか?
A 1回で作業できる範囲が100円玉から500円玉ぐらいになります。
  色素を抜き取ってエナメルが元に戻るまで10時間はかかります。それを3回から多い場合は7、8回繰り返し1ヶ所の転写が抜き取れるという作業です。
小さい範囲の転写であれば3日ぐらいで終わりますが、範囲が広くなれば2、3週間はかかります。
前途説明しました通り、転写してからの時間の経過が重要ですので、エナメルの転写色移りに関しては全て「急ぎ」扱いとして届いたらすぐに作業に取り掛かっております。


エナメルの色移り染み抜き(まとめ2)にもご覧ください。


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